Stage Report by mumps

 


 多分、9/22の時点で皆があきらめていただろう。
 何がって??、そう天気である。

 日比谷野外大音楽堂で行われた、'Music Bazaar in Yaon'はそんな不安にさいなまれながら、9月23日の開幕を迎えたのです。
 この日、久々に四人囃子が岡井、坂下、佐久間、佐藤、森園の5名で再演される事が四人囃子公式WEBサイトで告知され、筆者も9月23日を指折り数えて待っていたのです。

 が、9月22日時点で、秋雨前線と台風18号の来襲.....

 しかし、奇跡が起こったのだろうか??9月23日当日は何と関東南部はドピーカンとなったのです。公演中、主催者が話したジョーク(あの歳で、なかなかのジョークだったと思う....)は、あながちジョークではなかったのだろうか???
 それとも、当日音楽を一生懸命楽しんでくれた障害者の人達のおかげなのかもしれない....(ちなみに、そんななか九州をはじめとする台風18号の被害に遭われた方々にはお悔やみ申し上げます)

 四人囃子の佐藤満氏のGONちゃんが散歩し、坂下秀美氏が障害者の手を取って席に案内する姿も見受けられた、そんなドピーカンの日比谷野外音楽堂で行われた'知的障害者を正しく理解する会'主催の'Music Bazaar in Yaon'での四人囃子についてをレポートしましょう。

 ステージ上の機材は先の金子マリと競演した森園氏の機材以外は殆ど総入れ替えです。真ん中にベースアンプが鎮座、その隣にドラムキットが置かれていたので(ちなみに森園氏の機材はドラムと反対側のキーボードの前)、満氏は筆者から見て一番遠い位置なのだなと、判る。
 ちなみにキーボードにはハモンドのB-3があって、ちょっと安心。やっぱ、坂下氏にはハモンドを弾いて欲しいのである。

 さてさて、そんなステージの準備も終わり(ただ、かなり手間取ってましたね、おしたなこりゃ...)、秋の陽も落ちつつあるころ、四人囃子のメンバーが左右から登場、ステージ上左のキーボードブースに坂下氏、その前にオリンピックホワイトのストラトを抱えた森園氏(何故か金子マリのステージから4〜5本のギターが置かれています)、ステージ中央のベースアンプ前にオリムピックホワイト(だいぶ焼けたと思われる)のジャズベを下げた佐久間氏、ドラムキットの森の中に岡井氏、そしてステージ右にブルーのメタリックのギターを持った満氏の5名がスタンバります。

 ちょっと客席を見回すと客入りも7割強にはなったでしょうか??

 メンバー登場とともに、客席から声がかかります。やはり四人囃子に期待しているお客さんがかなりいるのでしょう。
 そんななか、スポットの点滅とともに一曲目の'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'でステージ開始。
イントロのリズムの中、森園氏のフレーズが宙を舞います。
 ちょっと、リズムがズレてるな??、どうも森園氏はこの曲を遅めに演奏したがるみたいです。そういえば、金子マリとのステージでは髪の毛を後ろに止めていた森園氏が髪留めのゴムを外し、風になびくシーンを見て、'おせっかい'の頃のデイブ・ギルモアのライブでの姿が何となくだぶってしまう。

 ところで、音のほうは正直PAは不調、特にオルガンと満氏のギターがかなりオフ気味。
 '円盤'が終わると客席から大きな拍手が起こります。

 そして森園氏の短いMCで中村哲氏がステージに呼ばれます。(ちなみに、哲っつあん登場時に一番の大声で叫んでいたのは多分筆者です^^)
 やった、願いがかなったかも知れない、ソプラノとテナーを持って来ている、と言うことは???と期待をしていると、その期待を良い意味で裏切って、次に演奏されたのは何と'包'から'モンゴロイド・トレック'!!!!!!
 哲っつあんのテナーが森園、満両氏のギターとともにテーマを奏でます。'包'の頃は満氏と佐久間氏のツインギター、坂下氏がシンセでベースラインを演奏していたのと比べると、何かちょっと変な感じ。でも、中間部の複雑なブレークやエンディング前の怒濤のリズムが佐久間、岡井両氏によりタイトに演奏されます。
 ちなみに、テーマの切り替え前に何故か満氏がタクトを振るしぐさが面白かったね。

 さて、哲っあんが共演している、そしてソプラノに持ち替えたって事は、そう当然次の曲は'なすのちゃわんやき'。昔懐かしい森園氏脱退直後のフォームでの演奏です。ただ、当然プリは居ません(^^)、ギターはエレクトリックを満氏、アコースティックを森園氏のオベイションという'89年の'FULL HOUSE MATINEE'フォーマット。残念ながら、PAの不調は解消されず、相変わらず満氏のギターはオフ気味だし、そうこうしている内に森園氏のオベイションもどうもオフ気味、ちとクリッカブルノイズも混ざって来ました。加えて変な低音のハムノイズが混じり始めるは、どうも岡井氏はハイハットにトラブってたらしいはで、どうも演奏の興をそぐような事が起こり始めます。(注:このノイズ、多分アース不良じゃーないでしょうか??殆どノイズループしてましたし.....そういえば特定の周波数でブースともかかってましたね、これ)モニタの返りも良くなかったのか、どうも'なすちゃわ'は消化不良気味でした。

 さて、哲っつあんがソプラノを持ったまま、と言うことは次の曲は.....そう'泳ぐなネッシー'であります!!!!!
いや、あのテーマが流れ、ソプラノがむせび泣く、そして森園氏のボーカルが流れるとは、正直筆者感無量でありました。
 まあ、相変わらずPAは不調なのだけど、この曲がこのフォーマットで聞けるとは.....(実は、四人囃子公式WEBサイトのaoさんと、哲っつあん出るなら、このフォーマットで'ネッシー'が聞きたいなーなんて話してたのです)
 当然、オミットされた部分もありますが、可能な限りスタジオ版に近い形で演奏は続きます。あのファンの間では有名な岡井氏苦悩の五拍子、そしてド迫力のブレーク部、テーマ前のコミカルなパート、全てが激しく、そして楽しく奏でられていきます(これでPAが完調なら.....)。そして再びテーマに戻り、哲っつあんのテナーが素敵なオブリを繰り広げるなか、森園氏のボーカルが流れます。最後の森園氏の悲しげでやさしげな声が流れ、曲が終わっていきます。

 しかし、'なすちゃわ'と'ネッシー'を聞いて、この二曲でもしかして'76年の野音の呪縛がようやく溶けたのかも知れません。四人囃子の歴史の中で、あの野音は一番問題を残したライブだったのですから....

 さて当然、客席はヤンヤの拍手です。その拍手を打ち消すように'一触即発'が始まります。
まさに、'気持ちのいい夕方に....'この曲が鳴り響きます。客席も負けないような大歓声、やはり皆、この曲を聞けないと四人囃子を見に来たとは言えないのでしょうか??
 ただ、この曲では、正直PAがひどすぎました。坂下氏のシンセのメロディーは殆ど聞こえませんし、あのハムノイズが唸りを上げてしまいましたし、満氏のギターはせっかくのソロパートでも、結局オフ気味です。森園氏も後半の戻りの部分でついに白のストラトがおかしくなり、最後のダブルチョークの前にリバースヘッドのストラトに持ち替えてしまいました。正直なところ、欲求不満の残る'一触即発'となってしまったようです。

 さあ、多分20世紀最後の四人囃子のライブが終わってしまいました。あれだけトラブルに会いながらも、メンバーは観客に笑顔で答えてステージを後にしようとしています。
 メンバー紹介も無しにステージを後にしようとした森園氏を佐久間氏が引き留め、メンバー紹介が行われます。(何故か、坂下氏と佐久間氏を間違えてましたねー、深読みすればジョークかな??、あ、そういえば岡井氏のコールを忘れてたような気も......)
 客席からも拍手と歓声が飛びます。

 まあ、時間も考えれば、選曲的にはこういう結果になってもしょうが無いところでしょう。確かに、他にも聞きたい曲もありましたし、出来れば満氏のボーカル曲も聞きたいところでした。それにPAの不調やトラブルもありました。でも、筆者の近くで見ていた、それまで演奏に集中していなかった障害者の女の子が、'円盤'や'ネッシー'の詩が始まった瞬間からステージを見つめ、顔が明るくなったのを偶然見た瞬間から、そんなことはどーでも良い、四人囃子の曲はまったく古くなっていないし人をひきつける魅力がある事を確信したそんなひとときだったのです。